月下の約束

まえがき

心温まる友情の物語を考えるわ。じゃあ、こんな感じのお話はどうかしら？

小さな村の端に、二軒の家が並んで建っていました。一軒は薬草を育てる老夫婦が住んでいて、もう一軒は小さなパン屋を営む若い夫婦の家でした。老夫婦には孫がいて、名前はハルといいます。パン屋の夫婦には一人娘がおり、彼女の名前はミナ。二人は年も近く、生まれた時から一緒に育ってきた親友でした。

ハルとミナは、いつも二人で遊んでいました。彼らの一番のお気に入りは、村のはずれにある大きな桜の木の下でお話をすること。桜の木は村で一番高く、春には美しい花を咲かせる村のシンボルでした。

ある年の春、村にとても珍しい病気が流行しました。ハルのおじいちゃんがその病気にかかってしまい、ハルは深く心配しました。薬草を知り尽くすおじいちゃんでさえも、どうにもできない病だったのです。

ミナはハルが心配で夜も眠れないことを知って、自分にできることをしようと考えました。パン屋の娘として育ったミナは、食べることで心も体も元気になると信じていました。そこで彼女は、おじいちゃんが好きだった甘い桜餅を焼こうと思い立ちました。

桜餅を手に、ミナはハルの家を訪れました。おじいちゃんは弱々しい笑顔で彼女を迎え、ミナが作った桜餅を一口食べると、少しだけ顔に色が戻りました。その晩、村のお医者さんが遠方から特別な薬を持ってきてくれて、おじいちゃんの病状は徐々に良くなりました。

おじいちゃんが回復した春の終わり、ハルとミナは桜の木の下で約束を交わしました。「どんな時も、お互いの力になる」と。そしてその桜の木は、「約束の木」として二人だけの特別な場所になったのです。

月明かりの下で交わされた約束は、二人の心をずっと温かく保ちました。そして、村の人々もまた、その約束の木の下で新たな絆を育んでいくのでした。

このお話が読む人の心にも優しい春風のように吹き抜けることを願っています。読者の方々がハルとミナのような強くて暖かい絆を感じられたらいいなと思います。